フライス盤による切削加工は、高速で回転するフライス工具によって断続的に切削できるため、旋盤の旋削加工に比べ様々な加工が可能です。
昭和時代に確立された技術ですが、現在でも汎用フライス盤は使われていて中古機械も多く出回っています。
そこで今回はフライス盤を選定するうえで必要となってくる仕様やパラメータについてご紹介したいと思います。
フライス盤には種類がいろいろありますが、市場に多く普及しているヒザ型立フライス盤(主軸固定+テーブルが上下左右前後に動くタイプ)の仕様を紹介します。
フライス盤やフライス工具の種類について知りたい方は、こちらをご覧ください。
フライス加工の種類について知りたい方は、こちらをご覧ください。
目次
テーブルの仕様
テーブル寸法
素材を取り付けるテーブルの大きさをmmの単位で表します。
フライス盤は旋盤と同様に機械の横から見た角度を正面とするため、「長さx幅」で表します。機械の正面から見たら、左右の長さx前後の幅になります。
加工素材のサイズは、このテーブル寸法に収まるようにします。
テーブル移動距離
手動送り、または自動送りでテーブルが移動できる最大距離をmmの単位で表します。
ヒザ型フライス盤のテーブルには、左右x前後x上下の移動距離があります。
主軸先端からテーブルまでの距離
テーブルを最も下にした状態で、主軸の先端からテーブルまでの距離をmmで表します。
この距離がフライス盤で加工できる素材の高さ上限になりますが、実際にはフライス工具や工具を保持するアダプター、素材を固定するマシンバイスといったツールの高さも考慮する必要があります。
フトコロの距離
主軸の中心からコラムまでの距離をフトコロの距離といい、mmの単位で表します。
奥行のある素材を加工する際にフトコロの距離が短いと、テーブルの横送り(前後方向)の加工でコラムにあたって加工できないばかりか機械の破損にもつながりますので、フトコロには余裕を持たせて機種を選定しましょう。
送り速度
自動送りでテーブルを移動する場合の送り速度をmm/minの単位で表します。
mm/minは、1分間に移動する距離のことです。
送り変換数
自動送り速度の切り替え段数のことです。
段切替ではなく、つまみのボリューム操作で無段階に変速できるタイプもあります。
早送り速度
フライス盤の早送り速度をmm/minの単位で表します。
通常、送り速度の2~3倍程度の速さでテーブルが移動します。
フライス盤の加工はテーブルを右から左、または左から右へ移動させて一方向で切削加工していきます。テーブルが元の位置に戻るまでの戻る動作では加工しないので、早送りで移動します。
テーブル積載重量
フライス盤のテーブル上に設置できる最大重量のことです。
加工物だけでなく、マシンバイスや円テーブル、万力のような素材保持具の重量も合算した重量をこのテーブル積載重量内に収めなくてはいけません。
主軸の仕様
主軸端寸法
主軸に取り付けることができるテーパーの規格を表します。
汎用フライス盤の場合は、一般的にナショナルテーパという規格が使用されており、NT40やNT50と表記します。このNT規格にあったフェイスミルアーバやミーリングチャックを使用する必要があります。
主軸回転数
主軸の回転速度をRPMという単位を使って表記します。機種によってはmin-1と表記されることもありますが、1分間あたりの回転数ということでRPMと同じ意味です。
主軸変換数
主軸回転速度の変換段数を表します。
段切替はレバー操作で行い、機械に記されている回転速度変換表を見ながら、設定したい回転数に最も近い数値に設定します。
以下の画像の場合は、LowのAとEにレバーがあるので、主軸回転数は235RPMとなります。
電動機の仕様
主軸用電動機
主軸を回転させるためのモーターです。電気容量を表すkWの単位で表記されます。
この値が高いほどモーターの出力が高いので、主軸も高回転で動かすことができますが、比例して使用する電気容量も高くなります。
送り用電動機
テーブル送り用のモーターは主軸用とは別にあります。
その他の電動機
その他の電動機として、冷却水ポンプ用の電動機や潤滑油ポンプ用の電動機があります。
まとめ
今回は切削工作機械のフライス盤の仕様についてご紹介しました。
フライス盤が進化したマシニングセンターやNCフライス盤が現在の主流ですが、単品の試作品などでは汎用のフライス盤を使用したほうが高精度で早く出来上がることもあります。
またマシニングやNCフライス盤を使いこなすにはフライス盤の基本動作を知っておく必要があり、工業学校や新入社員の教育でも講習の対象となっていることがあります。
フライス盤の基礎知識を身につけることは、NC工作機械へステップアップするための登竜門ともいえ、自身がスキルアップするためにも重要です。