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コンプレッサーとは
コンプレッサーは日本語では圧縮機といい、圧縮した気体をタンクにため、その圧縮気体を動力源とする工作機械を使用するための装置です。
製造工場のコンプレッサーというと、通常は空気を圧縮するエアーコンプレッサーのことを指し、空気の圧力を利用するNC制御の工作機械では必須となっていることがよくあります。
例えばマシニングセンターでは工具の脱着、切り屑のエアーブロー、ツールチェンジの回転や工具のスピンドル回転などに使われ、重要な動力源となっています。
持ち運び可能な小型エアコンプレッサーはDIYでも人気があり、エアー工具やエアーブローによる清掃、車の空気入れなどに使われています。本記事では、製造業で使用するコンプレッサーについてご紹介いたします。
コンプレッサーの種類
エアーコンプレッサーのタイプは複雑で様々な機能や形状による分類分けができますが、空気を圧縮する方式は次の3点に分類されます。
レシプロコンプレッサー
シリンダー内のピストンをモーターで往復運動させ、シリンダー内の容積変化により空気を圧縮するタイプがレシプロコンプレッサーです。
往復式コンプレッサーともいいます。
小型~中型の機種が多く、大型を必要としない製造工場でもこのレシプロタイプがよく使われます。
ピストン運動による音や振動は最も大きいですが、販売価格は安価で最も売れているタイプでもあります。
レシプロコンプレッサー
レシプロコンプレッサーのモーター出力は、0.2~0.75kw、タンク容量は200Lあたりが限界で、構造上大容量には不向きです。
スクリューコンプレッサー
ケーシング内で雄と雌のスクリューロータを回転させて空気を圧縮するタイプがスクリューコンプレッサーです。
回転式コンプレッサーともいいます。
油冷式スクリューコンプレッサー
スクリューコンプレッサーにはオイル式とオイルを使用したオイルフリーのタイプがあります。
どちらもスクリューロータの形状は変わりませんが、オイル式は雄雌のロータが接触して圧縮空気を生み出すため、潤滑油が必要です。
対してオイルフリーは雄雌ロータが非接触で圧縮するためオイルは不要です。
オイル式はオイルフリーよりも空気圧縮率が高く、馬力・トルク共にも高いですが、オイル注入や定期的なメンテナンスが必要です。
オイルフリーはオイル式よりも圧縮率は低いですが、非接触なのでメンテナンスの期間も長く、クリーンな空気を提供することができます。
オイルフリータイプは、食品機械や化学機械といったきれいな空気を必要とする機械でよく使われています。
スクロールコンプレッサー
空気を圧縮するための渦巻き形状の装置が2個あり、1個は固定されてもう一方が周回して空気圧縮を行う装置をスクロールコンプレッサーといいます。
空気圧縮率が高く、音も静かといった特徴があります。
アネスト岩田 オイルフリースクロールコンプレッサ
他にもロータリー式コンプレッサーやクロー式といった圧縮方式があります。
また、上記は圧縮方式によるタイプを書きましたが、別の分け方として、
・湿式(オイルイン)か乾式(オイルフリー)か
・車輪がついた移動型(タンクマウントタイプ)か据え置き型(パッケージタイプ)か
・空気の冷却方式は水冷式か、空冷式か
・圧縮段数は1段圧縮か、2段圧縮か、多段圧縮か
といった分類の仕方もあり、多種多様化が進んでます。
エアーコンプレッサーのスペック
電圧(V)と周波数(Hz)
電圧(V)については、定格出力が2KW以下の小型コンプレッサーは家庭コンセントで使える単相100V対応の機種もありますが、工場で使用する中型(7.5KW以上)以上のコンプレッサーは三相電源200・220Vが必要です。
周波数(Hz)については、国内の電圧周波数は、東日本50Hzと西日本60Hzで異なります。
50/60Hzなどと書かれている場合はどちらでも使えますが、50Hzか60Hzのどちらか一方しか書かれていない場合は、使える地域が限定されます。
上の写真は60Hzなので西日本仕様ですね。
中古コンプレッサーを購入する場合は注意しましょう。
電動機定格出力(W)
コンプレッサーのモーターを動かす消費電力(W)で、馬力(PS)に比例します。
消費電力が高いと馬力も高く、気体圧縮の能力が高いということで機種を選定するうえでの目安になります。消費電力と馬力の関係は下表のようになります。
定格出力(KW) | 馬力(PS) |
0.75 | 1 |
1.5 | 2 |
2.2 | 3 |
3.7 | 5 |
5.5 | 7.5 |
7.5 | 10 |
11 | 15 |
15 | 20 |
22 | 30 |
タンク容量(L)
圧縮した空気を溜めておけるタンクのサイズです。L(リットル)の単位で表します。
当然タンク容量が大きければ大きいほど、圧縮空気を多くためておくことができます。
最近のコンプレッサーでは、定格出力(馬力)に応じた適当なサイズのタンクが標準で装備されているので、次の吐出し空気量から選定するとよいでしょう。
吐出し空気量(L/min)
1分あたりの空気使用量をリットル(L)で表します。
コンプレッサーを使用する機械が必要とする空気量を計算し、最適な吐出し空気量を求めます。空気量が足りないとNC工作機械だと制御不能となってしまいますので、必要な空気量に20%くらい余裕を持たせたくらいがちょうどよいでしょう。
コンプレッサーの吐出し空気量は、「温度20度、湿度65%の空気を吸い込む場合の吸込み状態での空気量」とJIS規格で標準吸込状態が定義されています。空気は温度によって膨張したり収縮したりしますので使用する環境が標準吸込状態と大きく異なる場合はスペック通りの能力に満たない場合があるので注意が必要です。
常用圧力(MPa)
使用する機械・機器が必要とする常用圧力MPa(kgf/cm2)を計算し、最適な圧力を選択します。
吐出し空気量と同様に圧力が足りなくなると工作機械の制御ができなくなるので、実際に必要な常用圧力よりも0.2MPaほど余裕を持たせるといいでしょう。
コンプレッサーの製造メーカー
ここでは、コンプレッサーの主な製造メーカーをご紹介します。
アネスト岩田
明治機械製作所
日立産機システム
高儀(EARTH MAN)
まとめ
今回は製造工場で必須ともいうべき、空気を圧縮する機械のエアーコンプレッサーについてご紹介しました。
工作機械でコンプレッサーを必要とされる機械は非常に多く、NC旋盤、マシニングセンター、プレスブレーキ、射出成型機(プラスチック機械)、鍛圧プレスなど幅広く活躍しています。
コンプレッサーはこれからも製造業では動力源として必要な装置となりますので、気体圧縮方式によるメリット・デメリットを理解しておくことが重要です。