シャーリングマシンは、ステンレスや鋼板といった板金素材を切断機械です。
板を切断するだけの機械なので仕様はさほど難しくないと思われがちですが、検討すべき点がいくつかあります。
今回はそのシャーリングマシンの仕様について解説いたします。
目次
板金の切断能力に関する仕様
切断能力(板厚)
切断できる板の厚さを t 、または mm の単位で表します。t はトンではなく、厚さを表す Thickness の頭文字の t ですが、t = mmなので同じ意味となります。
板厚の切断能力は、板金素材によっても変わってきます。
メジャーな素材だと、普通鋼(引張り強さ45kg/m㎡)、ステンレス(引張り強さ60kg/m㎡)、アルミ(引張り強さ25kg/m㎡)などがあります。
例えばアマダのS-2045というシャーリングマシンだと、普通鋼では4.5tまで、ステンレスでは3.0tまで、アルミでは6.0tといったように素材によって切断可能な板厚が変わってくるということです。
切断能力(長さ)
シャーリングマシンの正面に立った位置から、切断可能な板金素材の横幅をmmの単位で表します。機械の右端にゲージがあるので、このサイドゲージを超える長さ(横幅)の素材は切断できません。
カタログ値では、このサイドゲージが基準の長さで表されています。
バックゲージ
シャーリングマシンの上下の刃(ブレード)よりも奥に、板材の奥行きサイズを決定するためのストッパーがあります。
このストッパーをバックゲージといい、バックゲージを前後に調整することで奥行きサイズが決まります。
バックゲージには、手動タイプと自動タイプがあり、自動タイプをオートバックゲージといい最新の機種ではほぼすべてにオートバックゲージがついていて0.1mm単位のカウンターで奥行きサイズを指定することができます。
シャー角
シャーリングマシンには上刃と下刃があり、上刃には角度がついています。
この角度のことをシャー角といい、1°28’のように、°(度)と'(分)で表します。
下刃にはシャー角はなく平行になっていて、シャー角のついた上刃が下りてきて板金をカットします。板厚が分厚い板金素材を切断できるシャーリングマシンは、シャー角が大きくなっています。
メーカーによっては、レーキ角と呼称するメーカーもありますが、シャー角と意味は同じで刃の角度のことです。
ストローク数
シャーリングマシンが1分間に処理できる能力をSPMという単位を使って表します。
SPMは、Shots Per Minuteの頭文字をとった単位で、1分間の処理能力のことで、例えば50SPMだと1分間に50回切断する能力がある機械ということです。
プレス機械やベンディングマシンなどの板金機械ではよく出てきますので、覚えておきましょう。
クリアランス調整
クリアランスとは、板金素材を切断するときに上刃と下刃の隙間のことをいいます。
ダレやバリといった製品の精度や、刃の寿命に関わってくる重要な設定です。
クリアランスの調整には、ハンドルでの手動調整や、コントロール画面での自動調整機能があります。
軟鋼、アルミ、ステンレスなど、様々な種類の切断をする場合はクリアランスの調整も頻繁に行われるので、機械を購入する際はクラランスの調整方法を検討しておくとよいでしょう。
動力に関する仕様
駆動方式
シャーリングの動力源として使用する機構が表記されます。
多くのシャーリングマシンが機械式か油圧式ですが、メカニカル・アンダードライブなど、メーカー独自の表記方法があります。
※メカニカルとは機械式のことです。
パワーユニット
主電動機の定格を電圧(V)と周波数(Hz)を使って表します。
電圧(V)については、三相電源200・220Vが必要です。
周波数(Hz)については、国内の電圧周波数は、東日本50Hzと西日本60Hzで異なります。
50/60Hzなどと書かれている場合はどちらでも使えますが、50Hzか60Hzのどちらか一方しか書かれていない場合は、使える地域が限定されます。
まとめ
今回は板金素材をせん断する機械、シャーリングマシンの仕様について解説しました。
これからシャーリングマシンの購入を検討している方は、オートバックゲージ(オートBG)の機能がついている機種を選択されることをお勧めします。
素材をせん断する際に奥行きサイズを調整することが意外と多く、いちいち手動で切替しているとかなりの労力になるのでボタン操作で調整ができるオートバックゲージがあると非常に便利です。
オートBGは最近の新機種ではほとんどの機種で標準機能としてありますが、中古を探している方は参考にしてみてください。