レーザー加工機とは
レーザー加工機は、板金など薄い素材をレーザーの照射によって切断、マーキング、彫刻ができる機械です。
切削や旋削のように削る工作機械ではなく、素材に直接触れることなく非接触で加工する工作機械です。
素材が板金や鋼板、ステンレスなど薄い素材で使われるため、機械の分類としては板金機械になります。
また、レーザーカットはシャーリングやプレス機械といった機械式のせん断ではないため、切断面のダレやバリが少なく良好な切断面が得られるという特徴があります。
レーザー加工の仕組み
晴れた日に虫眼鏡を使って紙に穴を開ける実験を小学生のころにされたことがあると思います。レーザー加工の原理も虫眼鏡で穴を開けるのと同じで、太陽光がレーザーに変わったものと考えていただければ、わかりやすいと思います。
レーザー光線を特殊なレンズで集光し、レンズの焦点で照射すると、3cmほどの鉄板を切断(溶断)できるほどの強力なパワーになります。
ちなみに、レーザーを英字で書くと、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(訳すと「放射線の誘導放出による光増幅」)で、頭文字をとってLASERと書きます。
レーザーの種類
レーザー加工機で使用されるレーザーは、次の3種類です。
CO2レーザー
CO2レーザーは、炭酸ガス(CO2)を使った気体のレーザー光線です。CO2レーザーは、発振器内で二酸化炭素、窒素、ヘリウムを混合してエネルギーを作り出します。
このCO2レーザー光線を使ったレーザー加工機が、最も多く普及しています。
YAGレーザー
YAGとは、イットリウムとアルミニウムの複合酸化物の結晶のことです。Yttrium Aluminum Garnetの頭文字をとってYAGと命名されました。
YAGレーザーは、YAGを使った固体のレーザー光線で、彫刻とマーキングに適しています。ポリエチレン、ポリカーボネート、鉄、アルミ、ニッケル、ステンレスなど樹脂や金属などにマーキングできます。
また、YAGレーザーは、溶接でも使われます。薄い素材でも熱影響による変形・歪み・引っ張り等がないため溶接ビード幅が小さく且つ美しいといった特徴があります。
但し、CO2レーザーと比べると機種・ランニングコストともに高価です。
ファイバーレーザー
ファイバーレーザーは、光ファイバーを媒質に用いた固体レーザーです。
ファイバーレーザーは難溶接材、例えば銅やアルミの溶接に向いており、細く打てるのでピンポイントに熱を加え、溶かします。
ファイバーレーザー加工機には、連続発振のものとパルス発振のものがあります。連続発振の機械は高出力で、切断や溶接に使われることが多く、パルス発振の機械は低出力で微細加工やマーキングに使われることが多くなっています。
ファイバーレーザーは、銅やアルミの溶接に向いており、細く打てるのでピンポイントに熱を加え、溶かします。
レーザー加工機のメリット・デメリット
メリット
物理作業の手間が少ない
レーザー加工機はタレットパンチプレスのように金型を必要としないため、金型交換の段取りを短縮することができます。
切断面が良好
レーザーカットはシャーリングやプレス機械といった機械式のせん断ではないため、切断面のダレやバリが少なく、面取りの後工程を短縮できるといった特徴があります。
複雑な加工が可能
シャーリング機械やタレットパンチプレスでは難しい複雑な形状(3Dなど)を加工できます。
消耗品がない
旋削や切削をするわけではないので、工具の消耗がなく日々の清掃くらいで使えるというメリットがあります。但し、長く使っていると加工レンズやミラー、ノズルなどに汚れやキズがついて精度が落ちてくるため、定期的にメンテナンスが必要です。
機械音や振動が少ない
旋盤やフライス盤の工作機械と比べて、機械音と振動がかなり小さくなっています。
デメリット
タレパンより加工速度が遅い
複雑な形状の加工ができる反面、加工速度はタレットパンチプレスより遅いです。
グラフィックソフトの知識が必要
レーザー加工機は、CorelDRAWやイラストレーターといったグラフィックソフトで作成したデータを取り込んで加工します。加工技術は必要としませんが、ソフトウェアを扱う技術が必要となってきます。
厚い素材には向かない
レーザーには切断焦点があり、焦点深度には限りがあるため、厚い素材には不向きです。タレパンほどではありませんが、3cmくらいの厚さが限界です。
反射率の高い素材は加工できない
古いレーザー加工機だと、反射率や熱伝導率の高い素材はうまく切断できませんでした。が、最近の機械はアルミでも銅でも使えるそうなので、購入前に仕様をメーカーに確認したほうが良いです。
切断面付近が変色する
熱加工により切断するため、どうしても切断面付近の変色は避けられません。きれいに仕上げたい場合は、切断後に研磨機で磨いてあげましょう。
機械代、ランニングコストが高価
レーザー加工機は機械そのものが高価です。また、ランニングコストでは電気代の他にCO2レーザー、加工ガス代が必要で、定期的に焦点レンズやミラーを交換する必要があります。
まとめ
今回は板金や鉄板をレーザー照射によって加工する機械、レーザー加工機についてご紹介しました。
レーザー加工機はよくタレットパンチプレスと比較されますが、加工精度や切断面のキレイさ、加工できる板の厚さはレーザー加工機が優れています。
しかし、加工の速さやランニングコストはタレットパンチプレスのほうが優れているなど、それぞれの機械にメリット・デメリットがあります。
加工素材の厚さや連続稼働時間、加工の速さや加工精度、ランニングコストなどを総合的に考慮し、最適な機械を選定することが重要です。