目次
プレス機械とは
鍛圧機械とも呼ばれ、薄い板金素材を上から下方向に強い圧力を加え、機械に装着した金型の形状に変形させることができる機械をプレス機械といいます。
プレス機械は、アルミやステンレスといった薄い板金素材を1回の加工で金型の形状に変形できるといった利便性・生産性から多くの工場で使用されている板金機械です。
プレス機械の特徴
プレス機械は金型とセットで使用し、金型の形状によって曲げ、絞り、抜き(穴あけ)といった加工ができます。
金型はパンチ(オス金型)とダイ(メス金型)があり、「スライド」と呼ばれる上下に往復運動する上テーブルにパンチをセットし、「ボルスター」と呼ばれる下テーブルにダイをセットします。
プレス機械は、自動車産業では欠かせない機械の一つで、車体工場や部品メーカーでは500トン以上の大型プレス機械を複数台並べて板金素材の自動供給、自動取出しといったプレスライン工程で使用されています。
動力源の種類
プレス機械の種類には、動力装置の種類と機械形状の種類があり、それぞれ特徴があります。ここでは、動力源の種類について説明します。
機械式プレス機械
スライドを上下運動させる動力源が機械式のプレス機械です。
機械式の構造にはクランク機構やスクリュー機構といったものがあり、機械的に蓄えたパワーをスライドの上下運動に変換します。
例えばクランク式の場合、フライホイールにモーターで回転運動を与え、動力源としてクラッチを介してクランクにパワーが伝達され、コネクティングロッドによって上下運動に変わります。
現在発売されているプレス機械では、この機械式が最も一般的で生産性の高いタイプです。
液圧式プレス機械
スライドを上下運動させる動力源が液圧式のプレス機械です。
液圧の種類は水圧と油圧がありますが、近年では水圧式はあまり使われることがなく、ほとんどが油圧タイプなので、液圧プレスのことを油圧プレス機械ともいいます。
モーターによりポンプを稼働させ、圧力のある油をシリンダに送り、シリンダ内のピストンを動かしてスライドの上下運動に変換します。
油圧プレス機の特徴は、ストロークの長さや加工速度、加圧力を自由に変更できるので深絞り加工に適しています。
しかし、過去に油圧装置のメンテナンス中に事故が多発したことがあり、特に油が漏れた場合はスライドの自重で制御不能となってスライドが落下することが過去にありました。
汎用性に優れますが、安全性の問題と生産性は機械式よりも劣るため、近年では油圧式はあまり使われていません。
人力プレス機械
足でペダルを踏む力を使ってプレスする機械が、フットプレスやフートプレス、蹴飛ばしプレスといいます。
手でレバーを押す力を使ってプレスする手動プレス機械(ハンドプレス)もあります。
今は発売されていませんが、昭和40年代までは町工場で使われていました。
機械形状の種類
C型プレス
機械を横から見たらフレーム部分が「C」の形状をしていることからC型プレスと呼ばれています。C型プレスはギャッププレスとも呼ばれています。
機械の手前が空いているため作業の汎用性に優れ人気がありますが、プレスの負荷が高すぎるとフレームが歪むことがあります。このフレームが歪むことを口開きといい、加工精度が落ちる要因になります。加圧能力は250トンまでとなっています。
AIDA ハイフレックスプレス
門型プレス
ストレートサイドプレスとも呼ばれ、本体を支えるフレームの4角に4本の柱があるプレス機械が門型プレスです。
門型は剛性が強く、加圧能力が250トンを超える大型のプレス機械はこのタイプを採用しています。
AIDA ハイフレックスプレス
トランスファプレス
連続多工程のプレスライン加工で使用される機械式のプレス機械で、形状は門型で大型のものが多く、長時間の連続稼働が可能な機械をトランスファプレスといいます。
トランスファフィーダという送り装置によって前工程から製品がトランスファープレスに自動供給され、プレス加工した後に次工程に自動供給されます。
トランスファープレス
サーボプレス
速度を制御するサーボモーター機構を備えたプレス機械で、NC装置との組み合わせによりスライドの速さを自在に変化できる機械がサーボプレスです。
アマダ サーボプレス TPWシリーズ
高い精度が必要とされる複雑形状の金型でプレスする際は、スライド速度を落として慎重に加工する必要がありましたが、スライド全体の動作が遅くなってしまい、生産性に問題がありました。
サーボプレスにすると、加圧部だけスライドの動きを遅くし、加圧部以外の上下運動は動きを速くするといった動作が可能になり、生産性が飛躍的に向上します。
近年では汎用性と生産性を兼ね備えたサーボプレスがメーカー各社から発売され、今後のプレス機械業界の主流になると考えられています。
粉末成形プレス
金属加工では、金属粉をプレスしてペレット状にするプレス機械です。金属以外にも化学工場や薬品工場で粉末を固形にする際に使用されます。
乾式粉末成形プレス
熱間鍛造プレス
鍛造プレスとは、強い圧力によって金属を押しつぶして圧縮し、金型の形状に成形する仕組みのプレス機械です。素材は薄い板金素材ではなく、10mm以上の分厚い金属の塊を加工します。
熱間鍛造プレス
熱間鍛造プレスでは、素材を1000°前後まで熱して変形しやすいようにしてから加工します。大型の機械が多く、加圧能力が4000トンを超える機械もあります。
冷間鍛造プレス
熱間鍛造プレスと同様に強い圧力で金属素材を押しつぶして加工します。
冷間といっても素材を冷やす訳ではなく、常温で加工します。
冷間鍛造プレスは、熱間鍛造プレスでは困難な高精度の加工が可能です。
また、材料は必要分だけ供給すればいいので、切削加工で出る削り屑がほぼ皆無になり、素材を効率的に使用できます。
冷間鍛造プレス
まとめ
今回は、板金素材をプレス加工する機械、プレス機械についてご紹介しました。
昭和中期まではプレスといえば足や手を使った人力が動力源で、高度成長期の産業界を支えてきました。その後プレス機械は用途に応じて様々な形態に進化し、板金素材を扱う工場では必要不可欠な存在となっています。
実際の現場では、加工する素材と金型に対する必要な圧力能力、トルク能力、仕事能力といった要素を熟慮して機種を選定しています。
プレス機械の仕様や自動化について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
プレス機械の仕様・能力|誰でもわかる!板金機械を徹底解説 プレス機械の自動化で使う周辺機器|誰でもわかる!板金機械を徹底解説