射出成形機とは|誰でもわかる!工作機械を徹底解説

射出成形機とは

プラスチック素材を熱で溶かし、金型に流し込んで成形する機械を射出成形機といいます。

プラスチック射出成形機ともいい、素材を溶かし(溶融)、型に流し込み(射出・成形)、固める(冷却)、取出すといった工程を1台で処理することができる工作機械です。

射出成形機の構造

射出成形機は機械の大型・小型にかかわらず、次の3つの装置からできています。

出典:日精樹脂工業(株) 横型射出成形機 Nex-Series

 

コントローラー

成形条件を制御するための装置です。

最近ではNC化が進み、射出成形の速度や圧力、シリンダー温度、金型温度、材料の射出量などの成形条件を指定して制御しています。

射出ユニット

プラスチックの材料を投入するホッパー、材料を加熱するシリンダー、噴射ノズルなどが含まれ、材料を熱で溶かして金型に注入するための装置です。

型締めユニット

金型の装着や金型の開閉を行い、材料の圧力に抵抗して金型を閉じておいたり、材料の突き出しを行う装置です。

 

射出成形機の工程

射出成形機内で行われる動作を工程別に説明していきます。

型締め

金型には可動側と固定側があり、可動側が固定側に近づいて金型が閉まることを型締めといいます。溶けたプラスチック素材(樹脂)を金型内に充填するため金型内には強い圧力がかかります。金型の締め付け力が弱いと製品にバリが出ますので、加工物に耐える型締力があるか事前に確認が必要です。

可塑化

射出成形では、シリンダー内でプラスチック素材に熱を加えて溶かすことを可塑化といいます。シリンダー内にはスクリューがあり、可塑化した成形素材をかき混ぜて温度を均一にしたり、次に注入する分量をスクリューの進み具合で調整する役割があります。

ノズル接

金型の型締めと成形素材の可塑化が完了したら、金型に溶融樹脂を注入するためにシリンダーの先端にあるノズルを金型に密着させます。この金型とノズルが密着した状態をノズル接といい、通常はこのノズル接の状態のまま連続加工していきます。

射出・保圧

溶融樹脂を速度調整して金型内に注入することを射出といいます。射出後、溶融樹脂に一定の圧力を加えます。これを保圧といい、溶融樹脂がシリンダーに逆流しないようにすることと、溶融樹脂が冷却すると収縮するため、射出した樹脂に圧力加えて調整する役割があります。

冷却

金型を巡回するオイルや水で一定温度に保った金型内で射出した樹脂を冷却します。冷却といっても冷たい温度で冷やすわけではなく、金型内の冷却水は20~100度の成形素材に最適な温度で巡回します。100度で冷却というと疑問を持たれそうですが、溶融樹脂の温度は300度近くになるため、100度でも十分に冷却・固化することができるのです。

型開き

冷却された樹脂が固まり成形品が出来上がったら、成形品を取り出すために金型を開きます。これを型開きといい、可動側(正面から見て左側)の金型が成形品と一緒に開いていきます。

突き出し

金型が開いたら、エジェクターピンで成形品を押し出して取出します。そのまま機械の下に落とすこともできますが成形品にキズがついたり変形する場合があるので、通常は取出し機を使って取出します。

 

機種選定の目安

射出成形機の導入を検討するうえで押さえておきたい仕様は、型締力と金型サイズです。

金型を射出成形機に取り付け、溶融したプラスチック素材を金型に注入すると、金型内部には高い圧力がかかります。この圧力が可動側の金型を押し開こうとしますので、締め付けておく必要があります。締め付け力が弱いと製品にバリが発生したり、金型より大きなサイズの製品となってしまい、精度の悪い製品が出来上がってしまいます。

なので射出成形機では、金型を締め付ける力を型締力として定義し、N(ニュートン)やtf(トンフォース)といった力を表す単位で表示します。
※最近の機械ではどのメーカーもニュートンが使われていて単位は統一されているようです。

型締力の計算式は次の通りです。

F=p×A/1000
F:必要型締力(tf)
p:金型内の圧力(kgf/cm2)
A:投影面積の合計(cm2)

※投影面積とは可動側・固定側両方の金型に圧力がかかっている面積のことです。

 

まとめ

今回はプラスチック製品を製造する工作機械の射出成形機をご紹介しました。

プラスチックの加工方法は射出成形の他に、押出成形、真空成形、ブロー成形、カレンダー成形といった方法もありますが、今回ご紹介した射出成型法が最も普及しており、日常生活で使用するプラスチック製品のほとんどが射出成形機で作り出されています。

射出成形機を扱ううえで必要な能力は、金型の設計から製作はもちろん、コントローラで型厚調整・圧力調整・計量値設定・速度設定など総合的に理解する必要があります。また、扱う機種の特徴や仕様・設定方法を把握しておくことも重要です。

 

参考文献:図解入門現場で役立つ射出成形の基本と仕組み  [ 杉山昭 ]