エンドミル加工方法の全知識!特徴と効率的な使い方を徹底解説

本記事ではエンドミル加工の基本から応用まで、工作機械におけるエンドミルの効果的な使い方やその特徴を解説します。加工方法の種類や動作の特徴、さらに加工時の注意点まで、エンドミルの効率的な加工技術の向上と製作精度の向上につなげるための全知識を本記事で得られます。

エンドミル加工とは

エンドミル加工とは、金属やプラスチック等の材料を削るために使用される切削工具「エンドミル」を用いた加工方法の一つです。フライス盤やマシニングセンターの主軸にセットした高速回転するエンドミルを材料に接触させ、形状や溝を削り取ることで、目的の形状に加工する技術です。この加工方法は、精密な加工が可能であり、特に金型製作やパーツ製造に不可欠な技術とされています。

エンドミル加工方法の種類

加工方法特徴適用例
ヘリカル加工エンドミルのねじれた刃を使用し、斜めに材料を削る方法。深い溝の加工、側壁加工
トロコイド加工円弧を描きながら加工することで、切削負荷を分散させる。硬い材料の加工、長寿命化の必要な加工
ランピング加工エンドミルを傾けて削り入れ、斜面を作る加工法。斜面の加工、穴あけ前のプリ加工
プランジ加工エンドミルを直接材料に突き刺すようにして加工。穴あけ、ポケット加工
コンタリング加工エンドミルで材料の外周や形状を削り出す加工法。形状出し、輪郭加工

エンドミル加工の特徴

  • 高い精度と仕上がり:エンドミルは精密な加工が可能で、滑らかな表面仕上げが求められる場面で利用されます。
  • 多様な材料に対応:金属はもちろん、プラスチックや木材など、様々な材料の加工が可能です。
  • 複雑な形状の加工:3D加工や複雑な内部形状の創出が可能で、多種多様な製品製造に対応します。
  • 工具の選択幅:エンドミルは切削条件や加工材料によって、多岐にわたる種類があり、加工に最適な工具を選択できます。

エンドミルの動作の種類と特徴

ヘリカル加工

ヘリカル加工は、エンドミルが工作物に対して斜めに進入し、螺旋状に切削する方法です。この動作により、切削負荷が均等に分散され、抜群の表面仕上げを実現します。特に、深い溝加工やサイドミーリングに適しています。

ヘリカル加工によるエンドミルの螺旋状軌道

トロコイド加工

トロコイド加工は、エンドミルの回転軌道がトロコイド曲線に沿って動く加工方法です。この技法は、切削負荷の変動を抑えながら高速で加工を行うことが可能で、特に硬い材料の加工や、効率的な素材の除去が求められる場合に有効です。

トロコイド加工によるエンドミルの回転軌道

ランピング加工

ランピング加工は、エンドミルが斜め方向(ランプ状)に材料に進入していく方法です。この方法は主にポケット加工や穴あけ加工に利用され、切削屑の排出が良好であるため、加工効率を高めることができます。

ランピング加工によるエンドミルの動き

プランジ加工

プランジ加工では、エンドミルを回転させたまま直接材料に突入させる方法を指します。主に穴あけや溝掘り加工に使用され、高い位置精度が求められる加工に適しています。

プランジ加工によるエンドミルの動き

コンタリング加工

コンタリング加工とは、エンドミルを用いて外形や内側の形状を切削する方法です。この加工は、表面仕上げが重要視される製品に用いられることが多く、精密な形状の加工が可能です。

コンタリング加工(外径切削)によるエンドミルの動き

エンドミル加工の際の注意点

  • 加工前にエンドミルの選定を正確に行うこと。材質や形状が加工物に適しているかを確認します。
  • 切削条件(回転数、送り速度など)を適切に設定すること。不適切な条件は切削不良や工具の損耗を早めます。
  • クーラントの使用を検討すること。適切な冷却は工具寿命の延長と加工品質の向上に寄与します。
  • 加工中の振動に注意し、必要に応じて減衰策を講じること。振動は加工品質に悪影響を及ぼします。

エンドミル加工の際の注意点

切削条件の選定

エンドミル加工の性能を最大限に引き出すためには、正確な切削条件の選定が不可欠です。材質、加工形状、エンドミルの種類によって、最適な回転数や送り速度は異なります。適切な条件のもとで加工を行うことが、精度の高い加工につながります。
エンドミル切削条件の計算方法!失敗しないポイントまとめ

クーラントの利用

エンドミル加工において切削液(クーラント)の使用は、工具の寿命を延ばし、加工品質を向上させる重要なファクターです。適切なクーラントを選択し、適量を供給することで、切削時のひずみや焼き付きを防ぎます。

工具の選定

加工対象物の材質や加工内容に応じて、適切なエンドミルを選択することが重要です。硬質材料の加工には、硬質コーティングが施されたエンドミルが有効ですし、複雑な形状の加工には、小径のエンドミルや特殊形状のエンドミルの使用が必要になる場合があります。
エンドミルの正しい使い方・選び方を徹底解説

加工パスの設計

エンドミル加工では、加工パスの設計が加工精度に大きく影響します。加工効率を上げつつ、必要な表面品質を確保するためには、加工パスの最適化が求められます。この過程では、CAD/CAMシステムの活用が非常に有効です。

バイブレーションの防止

原因対策
工具の伸び過ぎ工具のオーバーハングを最小限に抑える
切削負荷の急激な変化加工パスをスムーズにする
機械の剛性不足適切な機械設定と保守

バイブレーションは、加工精度を損ない、工具寿命にも悪影響を及ぼします。上記の表に示したような原因と対策を踏まえ、バイブレーションの発生を避けることが重要です。

エンドミル加工を行う際には、これらの注意点を適切に管理することで、加工品質の向上と効率化が図れます。また、加工条件や工具選定の基準となる情報については以下をご覧ください。
エンドミルとは!用途や使い方、選び方まで完全ガイド

まとめ

エンドミル加工は、その多様な方法と特徴を理解することで、より効率的かつ精密な加工が可能になります。ヘリカル加工からトロコイド加工、ランピング加工まで、各々に適した用途があり、適切な方法を選択することが重要です。また、ランピングやプランジ加工のように、特定の状況下でその真価を発揮する技法も多く、エンドミルの幅広い可能性を知ることができます。加工を行う際には、エンドミルの種類や材質、被加工材の性質を踏まえた上で、最適なパラメータ設定に注意を払うことが欠かせません。この記事を通して、エンドミル加工の基本から応用まで、包括的に理解し、より良い加工結果を得るための手助けとなれば幸いです。