旋盤は、金属加工のなかでももっとも基本的で歴史のある工作機械です。「ワーク(材料)を回転させ、そこに刃物を当てて形を削り出す」というシンプルな仕組みですが、実際にできる加工は幅広く、工業製品の多くは旋盤によって基礎となる形状が作られています。
この記事では、旋盤でどのような加工ができるのかを、初心者でも理解できるように分かりやすく解説します。加工の目的、工程の流れ、使用する工具の違いも含めて丁寧にまとめているので、旋盤に携わる方はもちろん、製造業に興味がある方にも役立つ内容です。
目次
旋盤加工の基本とは?
旋盤加工は、ワークを主軸で回転させ、固定した工具(バイト)で削る加工方法です。フライス盤やマシニングセンタのように工具を回す機械とは逆で、「ワークが回転」「工具は固定」という構造が特徴です。
この仕組みにより、まっすぐで精度の高い円形・円筒形の加工が得意です。
旋盤でできる代表的な加工一覧
本題に入る前に、代表的な旋盤加工を一覧でまとめると、次のようになります。
- 外径旋削(外丸削り)
- 端面加工(フェース加工)
- テーパー加工(角度加工)
- 溝入れ加工(溝削り)
- 突切り加工(切り離し)
- 内径旋削(ボーリング)
- ねじ切り加工(外ネジ・内ネジ)
- 面取り(C面・R面)
- 成形加工(特殊形状)
- バリ取り加工
以下で、それぞれの加工内容を具体的に見ていきます。
外径旋削|もっとも基本となる加工
外径旋削とは、ワークの外側を削って直径を調整する加工です。例えば、「直径30mmの丸棒を直径28mmに削る」といった用途に使われます。

できることの例:
- 丸棒を円筒形に整える
- 規定寸法まで外径を細くする
- 表面を仕上げてツルツルにする
使用工具の例:
- 外径バイト(超硬・サーメット・CBNなど)
外径旋削は旋盤加工の基礎中の基礎で、寸法精度がよく、表面粗さも良好に仕上がるため、旋盤加工といえばまずこの工程と言ってよい代表的な加工です。
端面加工|ワークの端を平らに削る
端面加工とは、ワークの端を平らに削る加工です。丸棒を切断したままだと断面が少し荒かったり、斜めになっていたりするため、旋盤でキレイな平面に整えます。

用途の例:
- ボルトやシャフトの端面を平面に仕上げる
- 加工の基準となるゼロ面の作成
- 後工程での組み付け精度を確保するための基準面加工
端面を削る際には、外径方向に移動させながら軽い面取りを同時に行うことも多く、見た目や安全性の向上にもつながります。
テーパー加工(傾斜をつける加工)
テーパー加工とは、円筒が徐々に細くなっていく斜めの形状を作る加工です。ワークの片側を太く、もう片側を細くしたい場合に用いられます。

テーパーの用途例:
- 工具ホルダーのテーパー部
- シャフトやピンのテーパー軸
- すり合わせ部品のテーパー形状
主な加工方法:
- 刃物台(上刃物台)を角度分だけ傾けて加工する方法
- 心押し台をオフセットしてテーパーを出す方法
- NC旋盤ではプログラムでテーパー量・角度を指定して加工
手動旋盤では経験や勘が求められる加工ですが、NC旋盤では安定して同じテーパーを量産できるのが強みです。
溝入れ加工|ワークに切り欠きを作る
溝入れ加工は、ワークの外径に細い溝(切り欠き)を入れる加工です。「Oリング溝」や「スナップリング溝」など、機械部品に欠かせない形状です。
使用工具:
- 溝入れバイト(幅1mm〜5mm程度が一般的)
主な用途:
- Oリング用シール溝
- Eリング・Cリングなどの止め輪溝
- 段差位置の基準となる溝
溝入れ加工は切りくずが溜まりやすく、工具が折れやすい加工でもあるため、切削条件やクーラント供給の調整が重要になります。
突切り加工(つっきり加工)|ワークを切り離す加工
突切り加工とは、ワークを旋盤上で切り離すための加工です。パイプや丸棒から複数個の部品を取り出すときなどに用いられます。

特徴:
- 幅の狭い「突切りバイト」を使用する
- チャッキングや突き出し長さが不適切だと、工具が折れたりビビりが発生しやすい
- 切りくずが絡みやすいため、送りや回転数の調整がポイント
突切りは一見シンプルですが、工具折損やワーク脱落などのトラブルにつながりやすい難易度の高い加工です。そのぶん、条件出しやホルダ選定といったノウハウが品質を左右します。
内径旋削(内径加工・ボーリング)|穴の内側を削る加工
内径旋削は、ワークの穴を広げて内側を削る加工です。「外径旋削の内側版」と考えるとイメージしやすい加工です。

できる加工例:
- ドリルで明けた穴を、指定寸法まで広げる
- 内径を高精度に仕上げる
- 段付きのステップ穴を加工する
- 深い穴の内面を仕上げるボーリング加工
内径バイトの特徴:
- 細長い工具になることが多く、ビビり振動が発生しやすい
- 外径加工に比べて切りくずの排出が難しい
- 加工条件の設定がシビアになりやすい
油圧機器や自動車部品など、精密な内径が求められる部品では欠かせない重要な加工です。
ねじ切り加工|外ネジ・内ネジを加工する
旋盤では、ネジ山の角度やピッチを正確に加工することができます。ボルト側の外ネジだけでなく、ナット側の内ネジも加工可能です。
ねじ切りの種類:
- 外ネジ(ボルト、シャフトのネジ部など)
- 内ネジ(ナット、ねじ込み式部品のメネジ)
ねじ切り加工では、旋盤の送り機構とスピンドル回転を同期させて加工します。手動旋盤ではギアの組み替えやレバー操作によってピッチを設定し、刃物を何回か往復させて少しずつネジ山を仕上げていきます。
NC旋盤では、プログラムでピッチ・ねじ長さ・ねじ形状を指定できるため、高精度で安定したねじ加工が行えます。
面取り加工(C面・R面)|エッジをならす仕上げ加工
面取り加工とは、エッジ(角)を軽く削って滑らかにする加工です。図面上では「C0.5」「C1」「R1」などの指示で表されます。
面取り加工の目的:
- バリを取り除き、鋭利な角をなくす
- 組み付け性を良くして、部品の挿入をスムーズにする
- 作業者が手を切らないようにする安全対策
- 見た目・仕上がりの美観向上
面取り自体は短時間で終わる加工ですが、図面通りの品質を確保するうえで非常に重要な工程です。
成形加工(複雑な形状を作る加工)
旋盤というと単純な丸棒加工のイメージがありますが、工夫次第でかなり複雑な形状も加工できます。
成形加工の例:
- 多段になった段付きシャフト
- 溝とテーパーを組み合わせた形状
- 角Rのついた曲線形状
- 特殊なプロファイル形状の回転体
手動旋盤では熟練者の技量に頼る部分も大きいですが、NC旋盤では輪郭形状をプログラムすることで、マシニングセンタに匹敵するレベルの複雑形状も加工可能です。
バリ取り加工|最後の仕上げで品質を整える
金属を削ると、どうしてもエッジ部分や溝の端などに「バリ」が発生します。バリは見た目が悪いだけでなく、組み付け不良やシール不良、ケガの原因にもなります。
そのため、加工の最後にはバリ取り加工を行い、ワークの仕上がりを整えます。
バリ取りに用いられる方法:
- 面取りバイトで軽くなめる
- 紙やすりや砥石で手仕上げする
- 専用のバリ取り工具を使用する
バリ取りは地味な作業ですが、最終的な品質やユーザーの印象を左右する大切な工程です。
旋盤加工は「円形部品の基本をすべて作れる」万能加工
ここまで見てきたように、旋盤でできる加工は次のように分類できます。
- 形状を作る加工(外径旋削、内径旋削、テーパー加工、成形加工)
- 仕上げ加工(端面加工、面取り、バリ取り)
- 分離加工(突切り加工)
- 付加加工(溝入れ加工、ねじ切り加工)
つまり、円筒形・円形部品に関する加工は、ほぼすべて旋盤で対応できると言えます。シャフト、ピン、ボルト、ナット、ブッシュ、ローラーなど、身の回りの機械部品の多くが、旋盤加工によって形作られています。
まとめ
旋盤でできる加工はシンプルに見えますが、実際には多くの種類があり、それぞれに適した工具や切削条件があります。外径旋削・内径旋削・テーパー加工・溝入れ・突切り・ねじ切り・面取り・成形加工・バリ取りなど、これらを組み合わせることで、さまざまな回転体部品を高精度に作り出すことができます。
精度の高い部品作りには、旋盤加工の基礎をしっかり理解したうえで、適切な工具選択と切削条件の設定が欠かせません。他の記事で扱う「旋盤用工具の種類」「旋盤メーカーの特徴」「NC旋盤と汎用旋盤の違い」といった内容と合わせて読むことで、より深く旋盤加工を理解できるようになります。


