マシニングセンターとは|誰でもわかる!工作機械を徹底解説

複数の刃物を自動で交換できる装置を持ち、NCのプログラミング制御に従って穴開けや平面削りなどを1台でこなせる機械をマシニングセンターといいます。

工具やテーブルの動きを工夫すれば、曲面など複雑で立体的な加工も可能になります。

従来は平面切削はフライス盤、穴あけはボール盤、旋削は旋盤、穴加工は中ぐり盤と工程ごとに得意とする工作機械を使っていましたが、マシニングセンターのNC装置に加工する段取りをインプットすれば、人手をかけずに複合加工ができます。

 

マシニングセンターの構成要素

日本工業規格(JIS)では、マシニングセンターは次のように定義されています。

「工作物の取り付け替えなしに、多種類の加工を行うNC工作機械。機械の構造によって主軸が水平の横型マシニング、垂直の立型マシニング、門型構造の門型マシニングなどがある」

具体的には、次のような機能が装備されています。

各機能の仕様について知りたい方は、こちら をご覧ください。

NC装置

機械を自動的に制御する装置。

NCとは数値制御のことで、使用する工具をツールマガジンから取り出して主軸にセットし、工作物に対する工具の位置を、数値情報で指令する制御方式のことです。

 

ベッド

マシニングセンターの底辺を支える基盤部分です。

ベッドの上には、テーブルを案内する案内面が備わっています。コラムとベッドが一体となった機種もあります。

 

コラム

ベッドから垂直に伸びた柱をコラムといいます。

横型マシニングセンターでは、このコラムが上下方向に移動します。

 

主軸

工具を取り付けて回転運動を与える装置です。

主軸の回転数は年々高速化が進んでいて、2万RPM以上も珍しくなくなりました。

但し主軸を高速化すると熱も比例して発生するため、熱膨張による精度低下を防ぐ技術も進化しています。(オイルクーラントや主軸内部を冷却する技術など)

 

ATC

一連の作業で必要となる工具をツールマガジンにセットしておき、必要に応じて素早く工具を自動で交換する装置です。

このATCはマシニングセンターを構成する重要な要素で、ATCが無ければNCフライス盤になります。

主軸と同様に、工具交換に要する時間も年々早まってきています。交換時間が1秒以内が一般的です。

大量生産で使用する場合は、この工具交換時間も重要な目安になるでしょう。

上記の画像はツールマガジンです。アームやロボットを使って主軸にセットします。

ATC(自動工具交換装置)とは|誰でもわかる!工作機械を徹底解説

 

インデックステーブル

割り出しテーブルともいい、角度を割り出しできる回転するテーブルのことです。

割り出し角度は1度きざみや任意の角度を指定できるものが多く、油圧モーターを動力源とし、4軸や5軸加工といった複雑な加工が可能になります。

 

マシニングセンターの仕様|誰でもわかる!工作機械を徹底解説

 

マシニングセンターの種類

立型マシニングセンター

フライス盤やボール盤を進化系とした系譜を持つ機械が立型マシニングです。

工具を垂直(立)方向に取り付けます。金型など小~中物の加工に適しています。

パレットチェンジャーの取り付けが難しいことや、削りかすの[はけ]がよくないことから大量生産には向きませんが、サイズがコンパクトであることと使い勝手が良いことから、この立型マシニングが市場に最も多く出回っています。

多品種で少量の生産をするときは、立型マシニングが適しています。

立型マシニングセンター

出典:キタムラ機械

 

加工軸数

基本的な構造の立型マシニングセンターは3軸加工が一般的です。

機械を正面から見て上下方向(Z軸)に主軸が動き、素材を固定したテーブルが前後(Y軸)と左右(X軸)に動くベッド型のフライス盤と同じ動きとなります。

平面削りや段加工、溝加工や穴あけなど、単純な加工であれば3軸のほうが機械の剛性が強く、精度を出すことができます。

一方で5軸加工の立型マシニングセンターも近年よく売れています。先ほどのXYZ軸方向の動きに加え、テーブルの回転(C軸)と傾斜角(B軸)がついたインデックステーブルを使用して5軸加工を可能としています。

メーカー各社では5軸加工のマシニングセンターをメイン機種に位置付けており、加工スピードの向上やより大きな素材への対応、長時間の無人運転などの技術が進んでます。

 

立型マシニングの主軸

立マシニングの主軸は、通常単軸ですが多軸タイプの機種もあります。多軸タイプは一方をフライス削り、他方をドリルで穴あけなど、同時に複数の加工を行うことができますが、高度なNCプログラミング技術が必要で汎用性がないため、大量生産用の専門機として使用される場合が多いです。主流は単軸になります。

主軸を保持するテーパーは機械の大小にもよりますが、BT20~50、BBT30~50、HSK25~63あたりが一般的に使われています。

 

立型マシニングのテーブル

3軸加工の立マシニングでは、フライス盤で一般的に使われている長方形のテーブルにT溝が入ったものが使用されています。

5軸加工の立マシニングでは、回転するインデックステーブルに傾斜角もつけることができるテーブルが採用されています。

 

立型マシニングのATC

立マシニングのATCは、ツールマガジンから必要なツールをアームによって交換するアーム型が主流です。ツールマガジンはドラム式とチェーン式のタイプが一般的に使われています。

ツールマガジンに収納できるツール数は、ドラム式だと~50本までくらいが限界で、チェーン式だと100~600本といった大量に収納できる機種もあります。

 

横型マシニングセンター

中ぐり盤の進化系とした系譜を持つ機械が横型マシニングです。

工具を水平(横)方向に取り付けます。

削りかすの[はけ]が良く、またパレットチェンジャーを装備できることから、長時間の連続稼働に向いています。パレットチェンジャーを使わなくても、多面のイケールに複数の素材を取り付けて複数加工することも可能です。

横型は立型に比べてNCプログラミングが難しいとされてきましたが、近年ではCAD/CAMの発達のおかげで差が少なくなってきています。

横型マシニングセンター

出典:三井精機工業

 

横型マシニングセンターでは、3軸制御、4軸制御、5軸制御のタイプがありますので、順に説明します。

3軸制御の横型マシニング

XYZの3軸を制御できる横マシニングの場合、基本的な動作は次のようになります。

X軸:
機械を正面から見て、左右の方向に動く動作がX軸です。横マシニングではテーブルが動くのが一般的です。稀に主軸頭を含むコラムが左右に動くタイプもあります。

Y軸:
機械を正面から見て、上下の方向に動く動作がY軸です。横マシニングでは主軸が上下に動き、縦方向を制御します。

Z軸:
機械を正面から見て、前後の方向に動く動作がZ軸です。横マシニングではテーブルが前後に動く機種とコラムが前後に動く機種があります。

 

4軸制御の横型マシニング

3軸制御マシニングの機能に加え、B軸を制御できるタイプが4軸制御の横マシニングになります。XYZ軸は基本的に3軸制御と変わらないため、B軸のみ説明します。

B軸:
加工素材が水平方向に回転する動作がB軸です。マシニングセンターではインデックステーブルが回転し、任意の角度に割り出すことができ、他のXYZ軸と同様にマシニングで制御することができます。

任意の角度に割り出す機能がない回転テーブルを使う場合は、マシニングと連動しないためB軸とは呼ばず、B機能という言い方をします。

 

5軸制御の横型マシニング

4軸制御マシニングの機能に加え、C軸を制御できるタイプが5軸制御のマシニングセンターです。

C軸:
加工素材が垂直方向に回転する動作がC軸です。B軸は水平方向に回転するのに対し、C軸は垂直方向(主軸の方向)に起き上がるチルティングテーブルというテーブルが使用されます。

5軸制御のマシニングセンターでは、加工素材を任意の位置、任意の角度から切削することができます。位置はX・Y・Z軸で指定し、角度はB・C軸で指定します。

 

門型マシニングセンター

プレーナーのような門型の形状をしたマシニングセンターを門型マシニングといいます。

大型・重量物の重切削加工に適しています。

門型マシニングセンター

オークマ MCRシリーズ

 

まとめ

今回はマシニングセンターの構成と種類についてご紹介しました。

マシニングの先端技術開発をメーカー各社が取り組んでいるため、加工速度と精度は著しい進化を遂げています。主軸の回転速度が10万RPMといった機種もあります。

マシニングセンターとNCフライス盤の違いは、ATCとツールマガジンがついているかどうかの違いです。マシニングはNCフライス盤の進化系ということになります。

NC旋盤の進化系としてターニングセンターという機械も市場に出回ってますが、こちらもマシニングセンターと同等かそれ以上の機能を持っています。

実際に機種を選定する際には、同一製品の大量生産か、または多品種少量生産か、ワークの大きさや材質、NC装置メーカーの種類など、必要とする機能を洗い出して検討を重ねることが重要です。