研削盤の研削条件|誰でもわかる!工作機械を徹底解説

研削盤による研削加工をする場合、最も重要なことは次の3点です。

・加工の精度が良いこと
・加工時間が短いこと
・砥石の寿命が長いこと

最適な条件で加工するには、素材の材質、硬さ、形状、状態と工作機械の特性を理解し、最適な砥石の種類を決定し、能率的な研削条件を選定することが重要になります。

研削盤の種類や研削加工の種類を知りたい方は こちら をご覧ください。
研削盤の仕様について知りたい方は こちら をご覧ください。

砥石の周速度

回転する砥石の外周で研削する研削盤では、砥石の周速度は十分に注意して調整する必要があります。

周速度が高速になりすぎて研削条件が合わないと砥石が高温になり、砥粒がダメージを受けて砥石表面の凹凸が平坦になります。すると素材に焼けやビビリの悪影響が出るため、最適な周速度で加工できる砥石を選定します。

周速度の計算式

砥石の周速度は次の計算式で計算します。

周速度(m/min) = 砥石の外径(mm) × 3.14 × 主軸回転数(min-1)÷1000

主軸回転数は使う機械によって決まっているため、使用する砥石の外径を調べて上記の計算式に当てはめれば周速度は簡単に計算できます。

例)主軸回転数1500min-1で砥石の外径が100mmの場合、周速度は471m/mmになります。

100 x 3.14 x 1500 ÷ 1000 = 471(m/mm)

 

周速度の表記について

上記計算式の周速度は1分あたり何m進むかという単位のm/minで表しましたが、砥石メーカーによっては1秒当たり何m進むかというm/sの単位を使用する場合もあります。

この場合は上記の周速度(m/min)の値を60で割ると、1秒当たりの単位(m/s)になります。

 

最高使用周速度

研削盤の砥石には、安全に使用できる最高限度の「最高使用周速度」が表記されており、この最高使用周速度を超えて使用してはならないことが労働安全衛生規則に定義されています。

労働安全衛生規則 第百十九条
(研削といしの最高使用周速度をこえる使用の禁止)
事業者は、研削といしについては、その最高使用周速度をこえて使用してはならない。

 

周速度が加工物に与える影響

砥石の周速度を大きくすると、研削抵抗は小さくなり、砥石の消耗量も少なくなります。加工物の研削量は多くなり、砥石の表面温度は高くなります。

砥石の周速度を小さくすると、研削抵抗は大きくなり、砥石の消耗量は多くなります。加工物の研削量は少なくなり、砥石の表面温度は低くなります。

周速度 大 周速度 小
研削抵抗 小さい 大きい
砥石の消耗量 少ない 多い
加工物の研削量 多い 少ない
砥石の表面温度 高い 低い

 

加工物の速度

平面研削盤ではテーブルが左右に動く速度が加工物速度です。円筒研削盤では回転する加工物の周速度が加工物速度になります。

素材の硬さや加工方法によって条件は変わりますが、一般的に砥石周速度の100分の1を目安に加工物の速度を設定すると、加工精度・加工時間・砥石寿命に良いと言われています。

 

切り込み

砥石が素材へ切り込む量は、周速度と同じくらい重要で最適な切り込み量を調整する必要があります。

切り込み量が少なすぎると研削抵抗は小さく、砥石のすべりが発生して砥石表面が高温になります。砥石の摩耗は少なくて加工面は美しくなりますが、砥石表面が目つぶれして平坦になり、加工物に焼けが発生することがあります。

逆に切り込み量が多すぎる場合は、研削抵抗が大きくなり、砥石の目こぼれや目詰まりを起こしやすく、仕上げ面は粗くなります。砥石の寿命低下にもつながるため、砥石の食い込みすぎには注意が必要です。

平面研削盤の場合、削る量は荒削りで0.1~0.2mm程度、精密削りとなると0.01~0.02mmから加工面と砥石の状態を見ながら切り込み量を増減して調整するとよいです。

 

まとめ

今回は研削盤の研削条件についてご紹介しました。

研削加工はフライスや旋盤などの切削加工と並び、除去加工法を代表する工作機械です。

研削加工は少しずつ加工するために荒削りには時間がかかり、回転砥石の摩耗も激しくなるため重切削は不向きとされていますが、加工面の粗さが小さく仕上がり精度が良いため、切削加工後の仕上げ工程でよく使われます。

しかし精度の高い加工ができる反面、事故の多い工作機械でもあります。

特に研削条件を間違えたり、砥石の最高使用周速度を超えて加工を行うと砥石が破裂したり軸からの脱落など、重大事故につながり大変危険です。

労働安全衛生法により「研削といしの取替え又は取替え時の試運転の業務」が、危険又は有害な業務と定義されております。従って、研削盤を使う作業の従事者は、安全衛生特別教育を受けなければいけません。

工作機械の従事者は、その機種の特性や能力だけでなく、危険性も十分に理解した上で作業にあたることが肝要です。

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